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「恐怖の報酬」(1953年フランス)リメイク(1977年アメリカ)
数多くの流れ者たちがたどり着く掃き溜めの町。
そこから500キロ離れた油田で大火災が発生、
強い爆風で火災を吹き飛ばす方法を決断した会社は
一触即発の危険な火薬ニトログリセリンの運搬
を町の中から選んだ4人の男に託す・・・。



ジョルジュ・アルノーの原作を、
アンリ=ジョルジュ・クルーゾーが
監督・脚色したサスペンスの傑作にして
映画史に残る名作の1本。
例のごとく10回以上は観ていますが、
何度観ても面白いおすすめ作です!


恐怖の報酬 [DVD]恐怖の報酬 [DVD]
(2006/10/27)
イヴ・モンタンシャルル・ヴァネル

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ジリジリとする暑さと共に、
職にありつけないため
食うにも困る毎日。
逃げようにも逃げ出せない男たち。

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掃き溜めの町のドラマが
40分ほどにわたって描かれるわけだが、
環境描写と人物紹介の面白さで
飽きさせないし、
何よりここでの人間描写が
後半効いてくる辺りもミソ。



そして油田で大火災発生、
ニトロ運搬のためのトラックドライバー選抜~
4人が選ばれ出発・・・までが1時間。



それからの1時間強は、
ジャングル含め険しい凸凹の山道を
「揺らすと大爆発=即死」の恐怖の中、
2台のトラックによる
死のロードムービー、
最大の見せ場がはじまります。



次から次へとトラブル、
息をのむスリルとサスペンス、
緊張の連続でもう凄いですが、
山道途中でのきりかえし、
“スポンジ板”の場面とオイル池、
の見せ場が印象的。



きりかえし場面では、山の中腹、
高い場所から突き出した板場の
脆さが描かれた後、
後輪のタイヤがすべっていく描写に
思わず「ああ~」とビクビク・・・。
ワイヤがひっかかり板場が
崩れていくさまはもう~~。

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オイル池では
誘導する1人が足をとられて
その男の上をトラックが・・・
絶叫の中進むトラック・・・強烈です。



そのほかにも道を塞ぐ巨大岩など
数々の見せ場が
粘り強い詳細な描写で迫ってくるので
ハラハラどきどきしっぱなし・・・

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ただ1番感心したのは
巻きタバコの葉が吹っ飛ぶ場面ですね。
ドライな見せ方の巧さにシビれます!
見事というほかない名場面。



映像テクノロジーの進化は賛成ですが、
こういう場面を見ると
今のエンターテインメント映画の多くの、
CGに頼りすぎで、「見せ方」のヘタさ、
を痛烈に感じますね。



直接見せることより、
1番効果的な見せ方は何か?
を熟知したクルーゾーの手腕に敬礼、です。

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サスペンスの見せ場だけでなく、
人間ドラマの展開も見応えがあり、
4人の中では私はシャルル・ヴァネル、
ダンディなヤクザもののジョーを演じた
彼が1番でしたね。
前半の町での彼と
トラックに乗ってからの彼の変わりようが
実に痛々しく、実に名演!です。



ほかの3人、
主役のまさにタフガイ、イヴ・モンタン!
3人と違う影のあるペーター・ヴァン・アイク、
明るいキャラで和ませるフォルコ・ルリ、
も好演です。

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監督はクルーゾー。
粘り強いどぎつい描写が特徴の1つで、
当時“フランスのヒッチコック”とも
呼ばれていました。
前々作「情婦マノン」も名作、
次作の「悪魔のような女」は今作同様
映画史に残るサスペンスの傑作です。



ちなみに今じゃ世界中が知っている
「スーパーマリオブラザース」の
キャラ名マリオ、ルイジは
作者がこの作品が好きでいただいたそうです。



尚、いくつかのメーカーから
ビデオやDVDがリリースされていますが、
メーカーによってはフィルムが揺れる、
画面が暗くてよくわからないなど
作品の良さが半減する場合もあり
注意ですね。

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で、クルーゾーの傑作のリメイクに
1977年に挑んだのがウィリアム・フリードキン監督。
奥さんが当時フランスの名女優ジャンヌ・モローで
その絡みも含め、クルーゾー直々の指名
ともあってやることになったようですが・・・。



リメイクが
オリジナルを超えた例外は多少あるにせよ、
本作は例にもれず、
正直、「なぜ作(造)った」
(byデニーロ版フランケンシュタイン)
と言いたくなる出来でした。



私は小学6年の時に劇場で1度、
TVで1度、ビデオで・・・と
何度もこのリメイク版の方を先に観た後で
はじめてクルーゾー版を観たのですが、
それでも出来は雲泥の差と感じました。



フリードキンは
「エクソシスト」「フレンチ・コネクション」
などで魅せるどぎつい描写など
クルーゾーに似たところもあるのですが、
都会派の匂いがあるせいか、
本作のジャングル世界には相容れなかったのかも
しれません。



内容もオリジナルと大差なく、
人間ドラマも面白みがなく、
(ジョーの役を殺し屋にしたのに
全然生きていないなど、キャラに余り個性ナシ)
肝心の見せ場の数々が
ブツ切りになる編集の雑さが1番残念で、
もっと後があるんじゃないのか?
と思ってしまう場面の連続でした。

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4人の男たちがいきつくまでを丁寧に描いたり、
政情不安によるゲリラ登場など
新味も多少あるのですが、
効果は全くないですし・・・



と、ボロカスに言っていますけど、
なんだかんだ言って、
このリメイク版も何度も観ているんですね。
そこだけは必見!という場面があるんです。
ポスターやチラシなど宣伝ビジュアルの顔、
ともいうべき「吊り橋」の場面です。

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この場面ではスタントマンの重傷者が4名出た、
というのもうなすける迫力です。
風でグラグラ揺れまくる橋の上で
橋が傾くと同時にトラックもものすごい角度に
傾きますからねぇ~
そのたびに「おぉ~」とビックリです。



ニトロ爆発の設定は関係なく、
トラック落ちるんじゃないか~?
の恐怖でドキドキ迫力満点です。
フリードキンもここは力を入れたようで、
ほかにはない、
2台がそれぞれ通るさまを描いています。
(・・・ただ終わり方は先に言ったように
「ぶつ切り」なので「?」「ど~なった?」となりますが。)



きょうふのほうしゅう(77年)吊り橋をわたる場面その1


もう1つ印象的なのはラスト、ですね。
オリジナルはあからさまとはいえ、
上手に決まっていましたが、
リメイク版はそれ以上に非情と言えます。



あと
冒頭の爆破シーンはビックリでしたし、
輸送するトラックを作っていく場面、
岩ならぬ大木を爆破する場面、
など細かい一場面などにいいところがあります。



何よりオリジナルを観なければ
大筋は変わりがないので
そこそこ楽しめると思いますね。
DVDは出ておらず、ビデオのみですが・・・。



初公開の際は
「国際版」という名目の短縮版92分でしたし、
後でビデオで30分も長い「完全版」121分が
リリースされましたので、
あるのなら本当の「完成版」を観たいですね。



フリードキンというと、
オリジナル「エクソシスト」を台無しにした
「ディレクターズ・・」の悪例がありますが、
もとが今イチの本作だと、
意外にいいモノができるかも・・・
なんて空想してしまいます。


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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

【2008/12/14 13:26 】 | サスペンス | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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